カルコパイライト型半導体を用いた次世代薄膜太陽電池の開発に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14550314
• 研究機関: 和歌山工業高等専門学校
• 研究代表者: 山口 利幸 和歌山工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (60191235)
• キーワード: 太陽電池 / カルコパイライト型 / バッファ層 / 透明導電膜 / 気相個相結晶化法 / 溶液成長法 / 高周波マグネトロンスパッタ法

研究概要

太陽光発電を実用化させるためには、高効率・低価格な太陽電池を開発することが重要な課題である。ここで取り扱う太陽電池はカルコパイライト型半導体を活性層とするもので、光吸収係数が大きいことから薄膜化による低コスト化およびバンドギャップを理論最適値に調整可能なことによる高効率化が期待できる。本研究では、高効率・低価格な次世代薄膜太陽電池を開発することを目的として、その構成材料について作製条件とその特性の関係を明らかにし、太陽電池用として具備すべき特性を有する材料の作製方法を検討した。
(1)気相固相結晶化法によるMo/ソーダライムガラス基板上へのカルコパイライト型半導体薄膜の作製
Mo/ソーダライムガラス基板上に、In/CuIn(Ga)Seプリカーサを、sを添加したSe雰囲気中で結晶化することによってCu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜を作製した。また、CuInSe/CuGaSe積層型プリカーサをSe雰囲気中で熱処理することによってCu(In,Ga)Se_2薄膜を作製した。この方法を用いることにより、カルコパイライト構造を有し、組成とバンドギャップを調整可能な薄膜を得ることができた。
(2)溶液成長法によるバッファ層(Cd,Zn)Sの作製
Cu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜/Mo/ソーダライムガラス基板上にヨウ素系化合物からの溶液成長法を用いてCdS(Zn=0)を成膜した。CdS成膜前の処理方法及びCdS成膜回数が、太陽電池特性に与える影響を評価した結果、顕著な差は認められなかった。
(3)高周波マグネトロンスパッタ法による透明導電膜n-ZnOの低抵抗化
高周波マグネトロンスパッタのOff-axis成膜法により作製したn-ZnOを、太陽電池の次の作製プロセスである表面櫛形電極形成時に熱処理を行うことにより、一層の低抵抗化を試みた。熱処理温度が高くなるに連れて、n-ZnO薄膜の抵抗率は減少した。
(4)太陽電池の作製
上記の各検討項目に対して太陽電池を作製し、その効率等の変化を調べた。その結果、更なる高効率化への課題等を抽出できた。

研究成果

• [文献書誌] Toshiyuki Yamaguchi: "Preparation of CuIn(S,Se)_2 thin films by thermal crystallization in sulfur and selenium atmosphere"Journal of Physics and Chemistry of Solids. Vol.64. 1831-1834 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yamaguchi: "Investigation of Preparing Conditions of Chemical Bath Deposited CdS Layer in Cu(In,Ga)Se_2 Solar Cell"CD Proceedings of the International Conference on Electrical Engineering 2003. ICEE055-1-ICEE055-4 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yaniaguchi: "Characterization of CuIn(S,Se)_2 thin films prepared by thermal crystallization from Cu-In-Se precursor in S/Se atmosphere"CD Proceedings of 3rd World Conference on Photovoltaic Energy Conversion. 2P-A8-16-1-2P-A8-16-4 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yamaguchi: "Study on Fabrication of Advanced Thin Film Solar Cells with Chalcopyrite Semiconductors"2003 Korea-Japan Joint Workshop on Advanced Semiconductor Processes and Equipments. 130-134 (2003)
• [文献書誌] 山口 利幸: "カルコパイライト型薄膜太陽電池の透明導電膜の作製"和歌山工業高等専門学校研究紀要. 38号. 13-17 (2003)
• [文献書誌] Toshiyuki Yamaguchi: "Preparation of CuIn(S,Se)_2 thin films by thermal crystallization in S/Se atmosphere and their photovoltaic applications"Technical Digest of 14th International Photovoltaic Science and Engineering Conference. Vol.2. 599-600 (2004)
• [文献書誌] 山口 利幸: "熱処理により作製したCu(In,Ga)Se_2太陽電池のバッファ層の検討(II)"第64回応用物理学会講演会講演予稿集. 1304-1304 (2003)
• [文献書誌] 中嶋 崇善: "太陽電池用CuIn(S,Se)_2薄膜作製時の結晶化温度の検討"平成15年電気関係学会開西支部連合大会講演論文集. G138-G138 (2003)
• [文献書誌] 仲 成浩: "真空蒸着法による太陽電池用Cu(In,Ga)Se_2薄膜の作製"平成15年電気関係学会開西支部連合大会講演論文集. G139-G139 (2003)
• [文献書誌] 谷山 博基: "Cu(In,Ga)Se_2薄膜太陽電池の透明導電膜n-ZnO成膜後の熱処理効果"平成15年電気関係学会開西支部連合大会講演論文集. G140-G140 (2003)
• [文献書誌] 山口 利幸: "セレン・硫黄混合気相中での熱処理法よるCuIn(S,Se)_2薄膜の作製(III)"第51回応用物理学関係連合講演会講演予稿集. 1635-1635 (2004)