研究概要 |
太陽光発電を実用化させるためには、高効率・低価格な太陽電池を開発することが重要な課題である。ここで取り扱う太陽電池はカルコパイライト型半導体を活性層とするもので、光吸収係数が大きいことから薄膜化による低コスト化およびバンドギャップを理論最適値に調整可能なことによる高効率化が期待できる。本研究では、高効率・低価格な次世代薄膜太陽電池を開発することを目的として、太陽電池用として具備すべき特性を有する材料の作製方法を検討した。 Mo/ソーダライムガラス基板上へ、In/CuIn(Ga)Seプリカーサを、Sを添加したSe雰囲気中で結晶化することによってCu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜を作製した。また、CuInSe/CuGaSe積層型プリカーサをSe雰囲気中で熱処理することによってCu(In,Ga)Se2薄膜を作製した。この方法を用いることにより、カルコパイライト構造を有し、組成とバンドギャップを調整可能な薄膜を得ることができた。 ヨウ素系化合物からの溶液成長法におけるCdS(Zn=0)成膜時の原料溶液濃度および成膜後の熱処理が、作製した薄膜の結晶性、電気特性や光学特性に及ぼす影響を評価した。特に、成膜後の熱処理により、太陽電池特性に飛躍的な改善が見られた。 i-ZnOのスパッタ成膜時における酸素導入効果および基板位置の影響を評価した。特に、高抵抗化のために、スパッタガス中に酸素を導入することが有効であった。 高周波マグネトロンスパッタのOff-axis成膜法により作製したn-ZnOを、太陽電池の表面櫛形電極形成時に熱処理を行うことにより、一層の低抵抗化を試みた。熱処理温度が高くなるに連れて、n-ZnO薄膜の抵抗率は減少した。 上記の各検討項目に対して太陽電池を作製し、その効率等の変化を調べた。特に、Sを添加したSe雰囲気中で結晶化することによって、太陽電池の開放電圧の飛躍的な向上が認められた。
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