本研究では、Si-MOSFETの基板内不純物ばらつきの統計性を厳密に考慮した擬1次元近似のもとでの確率分布関数と解析モデルを導出した。また、極微細デバイスに存在する離散的な不純物分布をデバイスシミュレーション可能にする我々の離散不純物モデルの正当性を物理的観点から検討した。具体的な検討内容と成果は、以下のようにまとめられる。 1.デバイス基板内をシート状に分割して各シートに含まれる不純物数のゆらぎをポアソン分布として考慮し、界面での表面電場のゆらぎに対する確率密度関数を求めた。そのうえで、しきい値電圧ゆらぎ等についての厳密な確率密度関数を初めて導出した。 2.導出した確率密度関数を典型的構造をもった微細MOSFETに適用した結果、デバイスの微細化に伴って、しきい値電圧ゆらぎ分布関数が通常仮定されている正規分布から大幅にずれてくることが判明した。 3.未だに世界的に広く用いられているatomistic不純物モデルと従来の連続的なjelly不純物モデルのもとで、Si-MOSFETの基盤内での不純物数(濃度)をさまざまに変化させ、モデルによる基盤内のポテンシャルの相違を検討した。その結果、巨視的なポテンシャルについては両者において大きな差が無いことを見い出した。これは、第ゼロ近似でのデバイス特性は両者に大きな差を示さないことを意味する。 4.離散的な不純物によるデバイス特性ばらつきは、各不純物の微視的な散乱ポテンシャルにより引き起こされることを見い出した。その結果、ドリフト拡散法のもとで微視的(短距離)ポテンシャルを切り出した、我々の不純物モデルの正当性を裏付けることができた。
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