研究概要 |
本研究は,層状酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_y(BSCCO)単結晶(転移温度:〜85K)に内在する固有ジョセフソン結合超格子をサブミクロン領域まで微小化し,そのナノエレクトロニクスへの応用を目指すものであり,本年度は,主にサブミクロン領域における同超格子の本質的なジョセフソンならびに準粒子トンネル特性,及び微小ジョセフソントンネル結合超格子に発現するクーロンブロッケード効果について検討し,以下の成果を得た。 (1)サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーの電流-電圧特性の評価 自己フラックス法により成長した同単結晶を電子ビームリソグラフィ技術を用いてサブミクロン程度のメサ構造に加工し,その電流-電圧特性の測定した。得られた準粒子トンネル特性より,単一固有ジョセフソン接合のギャップ電圧は約60mVと見積もられた。また,その電流は,変形d波モデルによるそれとほぼ一致し,BSCCOの超伝導オーダーパラメータは,純粋なd波モデルよりも強い角度依存性をもつことを明らかにした。更に,多積層接合の電流-電圧特性測定時に問題となる負性抵抗は接合における電力が430mW以上になると出現することがわかった。一方,サブミクロン固有ジョセフソン接合アレーのジョセフソントンネル電流密度は,接合面積が数μm^2以上の試料のそれと比較すると1〜2桁程度小さくなることを見出した。この電流密度の減少は,帯電効果を考慮することにより説明することができる。 (2)微小ジョセフソントンネル結合超格子に発現するクーロンブロッケード効果 上記(1)で得られた成果を基に,微小ジョセフソントンネル結合超格子に発現するクーロンブロッケード効果を観測するための素子構造を提案・設計し,集束イオンビーム加工装置を用いて作製したが,加工時のダメージによる特性変化のためクーロンブロッケイド効果の観測までには至らなかった。 以上本年度得られた成果は,BSCCO固有ジョセフソン接合のナノエレクトロニクス応用への可能性を示唆するものであり,来年度の研究展開への足掛かりが得られた。
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