平成14年度は、これまでに開発したMn-Znフェライト微粒子/ポリイミド複合厚膜を用いて分布定数コモンモードフィルタを試作するとともに、Ni-Znフェライト微粒子/ポリイミド複合厚膜をスクリーン印刷法で作製し、電磁気特性の評価を行った。 (1)コモンモードフィルタの第1次試作と特性評価、ならびに課題の抽出 Mn-Znフェライト微粒子/ポリイミド複合膜を用いた分布定数コモンモードフィルタ(サイズ;3.75×12.5×0.6mm)を試作した。試作フィルタは、GHz帯で最大20dBのコモンモード除去比を有し、平衡信号に対する減衰は3dB以内と小さく、GHz帯デバイスとしての有用性を実証できた。しかしながら、IEEE1394(400Mbps)やUSB ver.2(480Mbps)に適用するためには、動作周波数帯域をGHz帯から数百MHz帯にシフトする必要があり、複合材料におけるフェライト充填率を現状の50%からさらに向上させることが必要である。 (2)MZnフェライト微粒子/ポリイミド複合膜の作製 Mn-Znフェライトは電気抵抗率が低く、充填率の向上に伴う複合材料の抵抗率の低下により、リーク電流が増大し、デバイス性能に著しい悪影響を与える。Ni-Znフェライトは高い電気抵抗率を有するために、フェライト充填率の向上と高抵抗率を両立できる可能性があり、高電気抵抗率Ni-Znフェライト微粒子/ポリイミド複合膜の開発に着手した。Ni-Znフェライト微粒子とポリイミドワニスで調合されたペーストを用いて印刷・焼成された複合膜は約50%のフェライト充填率を有し、数百MHz帯で比誘電率10、誘電正接0.01以下、比透磁率6、磁気損失係数0.1〜1の電気的磁気的特性を示すことが明らかとなった。今後は、ペースト調合条件を変えて、Ni-Znフェライト充填率のさらなる向上を目指し、デバイスへの適合を図っていく。
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