平成14年度の研究実績は次のとおりである。 1.単偏光板式反射型LCDの中で最も単純な構造である位相差板1枚補償式では、TFT駆動の信号オン電圧を約2Vまで低くすると分光反射率の波長依存性が大きくなるという問題がある。今回、最近位相板の複屈折率Δnの波長分散を自由に制御できる技術が報告されたことを背景に、再検討したところ、位相板の複屈折率Δnの波長分散を最適化すると、オン電圧2Vでも単偏光板式の極限の表示性能に近いNBモードの無彩色表示が得られること、したがって現状のオン電圧3.2VのTFT駆動に比べ、パネルの消費電力を1/2〜1/3に低減できること、および最適な位相板の複屈折率Δnの波長分散は、現在実用されている位相差板のそれとは異なり、短波長で小さく長波長で大きくなる特性であることを明らかにした。 2.現在実用されている位相差板2枚補償・単偏光板式反射型TN-LCDでは、現在実用されている位相差板を用いた場合でも、オン電圧2Vで単偏光板式の極限の表示性能に近い、NBモードとNWモードの無彩色表示が得られること、したがって現状のオン電圧3.2VのTFT駆動に比べパネルの消費電力を1/2〜1/3に低減できることを明らかにした。 3.単偏光板式反射型DTN-LCDの低オン電圧こおける表示特性と液晶材料パラメータの関係を調べ閾値電圧V_<th>が現状より低い材料、すなわち弾性定数K_<11>が小さく誘電率異方性Δεの大きい材料が開発されれば、高画質を保ちながらオン電圧を2Vより更に低下できること、およびそのメカニズムを明らかにした。
|