本研究は、TFT駆動のTN系反射型LCDの低消費電力化に関する基礎的研究を行い、「高画質で超省電力の反射型カラーLCDの開発に必要な要素技術を確立する」ことを目的として行ったものである。具体的には、省電力化の決め手の一つは、TFT駆動の信号オン電圧を低下することによりその二乗に比例するパネルの消費電力を低減することであると考え、下記のTN系反射型LCDの表示特性とオン電圧の関係をシミュレーションで詳細に調べた。 (1)位相差板補償・単偏光板式反射型D(Double-Layered)TN-LCDおよびF(Film)DTN-LCD (2)位相差板補償・単偏光板式反射型M(Modified)DTN-LCDおよびMFDTN-LCD (3)位相差板2枚補償・単偏光板式反射型TN-LCD (4)位相差板1枚補償・単偏光板式反射型TN-LCD (位相差板の複屈折率Δnの波長分散を最適化した場合) その結果、(1)のDTN-LCD、(2)のMDTN-LCDおよび(3)のTN-LCDでは、現在実用(市販)されている代表的な位相差板を用いた場合でも、また、現状では複屈折率Δnの波長分散の大きい液晶高分子フイルムを用いざるを得ない(2)のMFDTN-LCDと最も簡単な構成である(4)のTN-LCDでは、現在実用(市販)されている位相差板の代わりに、複屈折率Δnの波長分散を最適化した位相差板を用いることにより、現状の代表的な液晶を用いた場合でも高画質を保ちながらオン電圧を約2Vまで低下できること、したがってパネルの消費電力を現状のオン電圧3.2VのTFTLCDに較べ1/2〜1/3に低減できることを明らかにした。また、これらの反射型LCDでは、現状より閾値電圧の低い液晶が開発されれば高画質を保ちながら更なる省電力化が可能であること、およびそのメカニズムを明らかにした。
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