本研究の目的は、ナノメートルサイズの超微細構造を用いることにより、目的に応じた複屈折性や多色性をもつ種々の人工異方性媒質を製作する技術を確立し、それを用いた光集積回路技術や高密度光記録媒質を開発することにある。本年度は、主に応用面での研究を行い、人工異方性媒質として誘電体交互多層膜を用いた偏光スプリッタと島状金属薄膜を用いた波長多重・偏光多重光記録媒質について研究を進め、以下の成果を得た。 まず、誘惑体交互多層膜を用いたY分岐導波路型偏光ビームスプリッタについては理論的な研究を継続して進め、特に分岐部の前に誘電体交互多層膜から鳴るプリズムを挿入した素子について、外部クラッドを持たない、より実現可能な構造について理論検討を行い高い偏光分離特性が期待できることを示した。また、石英とアルミナからなる誘電体交互多層膜の試作を継続して行い、レーザを用いた測定の結果、ほぼ理論通りの複屈折がえられれている事を確認した。 次に、波長多重光記録媒質については、人工異方性媒質の1つである島状金属薄膜をCD-Rの光、吸収層と反射層を兼ねた光記録層として用いて、レーザ照射によるディスク基板の局所的溶融変形を用いた光多重記録が可能であることを実験的に示した。この結果、以前実験的に示したものより、短波長域でお互いの記録波長が近い光記録媒質も実現可能であることが明らかになった。また、理論的な検討を行い、可視領域で島状銀薄膜を用いて、最低でも4〜5波長の多重記録が可能であることも明らかになった。一方、偏光多重光記録媒質については、その材料となる傾斜微粒子分散薄膜の分光特性について、薄膜や粒子の構造と偏光特性の関係について理論的に明らかにした。この成果を踏まえ、今後は偏光多重光記録媒質として最適な薄膜構造の範囲について検討を進める予定である。
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