研究概要 |
平成12,13年度の科学研究費で,サンプリングを可変させる新しいディジタル信号処理のいくつかのアルゴリズムを開発した.本研究では,この提案されたアルゴリスムを実用面から再検討することを目的した.これらのアルゴリズムはサンプリングを可変にすることで信号処理が主に加減算で行われ,演算や処理装置の簡単化に結びつく.以下,本研究で得られた主な結果を列挙する. 1.異なるサンプリングレートをもつフィルタ間の接続法 従来の一つの高いサンプリング周波数を使うオーバーサンプリング法に変えて,フィルタ間に1次ホールド処理を入れることで,例えば周波数推定の演算量が約1/10に減少できた. 2.同期加減算処理による周波数推定の高速化 並列同期加減算処理の両累積値の振幅値の比較結果によりサンプリングレートを制御する方法を提案し,推定時間を約1/3に短縮し,追従特性の改善を実現できた. 3.マルチレートDFT(MR-DFT),くし形フーリエ変換の雑音に対するロバスト性改善 MR-DFTでは,位相を変えた2つの処理を平均化することで,通常のDFTと同程度の性能を実現した.一方,ノッチ型くし形フィルタを基本としたくし形フーリエ変換に対して,resonator(共振)型くし形フィルタからなるResonator Fourier Transform(RFT)を開発し,信号受信機や打楽器を含む楽音に対する採譜システムに適用してそのロバスト性を確認した. 4.実楽器音や歌唱音を対象にした採譜システム 周波数変動や雑音環境の楽音に対して,並列構成ノッチ型くし形フィルタの最小出力値,並列構成共振型くし形フィルタの最大出力値に注目した採譜システム,適応くし形フィルタによる採譜システムを提案し,高い音高推定結果が得られた.
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