研究概要 |
ID情報に基づく鍵共有法を超大規模暗号通信ネットワークにおける鍵共有に適用するためには,鍵生成センタの負荷を軽減する必要がある.負荷の軽減を計るためには鍵生成センタを分散させる必要があり,鍵生成センタと全く同じ機能を有する鍵生成センタのクローン(clone)を生成し樹枝状に階層化する,という独創的な概念の着想に到達した. この新しい概念に基づいて,鍵生成センタのクローンを生成する方法について研究し,RSA暗号系の原理を導入して鍵生成センタからクローンを,また親クローンから新しい子クローンを生成できるアルゴリズムを開発した.親クローンと子クローン間の情報特性を詳細に検討した結果,親クローンから子クローンへの秘密情報の流れが一方向性を有することが明らかとなった.その結果,鍵生成センタのクローンを樹枝状に階層化することにより,超大規模暗号通信ネットワークに適用できる分散型の鍵生成センタを構築できる.また異なるクローンセンタに所属する任意のユーザ間のID情報に基づく鍵生成や暗号系の実現が可能であることも確認できた.さらに鍵供託システムへの適用の可能性を検討するために,枝葉のクローンセンタの固有の秘密鍵の変更の可能性を検討した.その結果,枝葉のクローンセンタが固有の秘密鍵を変更しても,異なるクローンセンタに所属するユーザ間で鍵共有の実行に全く支障のないことが確認できた. さらにID情報に基づく鍵共有法の有効性と階層化したクローンセンタの実用化の可能性を確認するために,鍵生成センタの機能を高性能PCクラスタシステム上で実装し,任意の2ユーザ間の鍵共有実験並びに暗号化・復号実験を行った.まず用いる素数の決定を初めとする実装条件の設定を行い,次に秘密鍵の発行と鍵共有を実行するために必要な計算量を測定した.その結果,センタのパラメータ設定を除いては高速処理が可能であり,実用化の可能性と有効性が確認できた.
|