研究概要 |
1.Matching pursuitsに基づいた波形符号化アルゴリズムの検討 本研究の目的は,従来個別に扱われてきた動き補償予測とその残差信号に対する波形符号化を統合し,両者を適応的に実行することで符号化性能の向上を図ることにある.このような目的に合致した波形符号化アルゴリズムとしてmatching pursuitsの原理に基づいた波形符号化方式に着目し,その改良を行った.matching pursuitsは冗長性を持たせた非直交な基底関数の線形結合によって波形を近似する手法であり,これまでは近似誤差のエネルギーが最小となる基底関数を繰り返し探索することで,より少ない基底で効率の良い近似を実現していた.しかし,これを波形符号化に応用する場合は,近似誤差だけではなく符号量の削減も重要なポイントとなる.そこで,近似誤差のエネルギーの変化量を符号化レートで正規化したレート・歪勾配を新たなコスト関数として基底関数を探索する手法を開発し,その有効性を確認した. 2.反復型動き補償方式の開発 Matching pursuitsと同様な反復的な処理で構成され,特定の領域に対して優先的に動き補償を実行可能な新しいアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムは前フレームの再生画像を初期値とし,位置とサイズが共に可変な正方ブロックに対して局所的な動き補償を繰り返し実行するものであり,反復型動き補償方式と名付けられた.一回の動き補償に必要なパラメータである動ベクトルおよびブロックの位置,サイズは上記のmatching pursuits符号化の手法と同様にレート・歪勾配をコストとして探索される.これにより,matching pursuitsと動き補償を同一のコストに基づいて評価することが可能となり,両者の適応選択を効果的に実行できるようになった.また,選択可能なブロックサイズを4,8,16…と2のべき乗に制限し,これらを階層的に配置するといった工夫により,上記パラメータの探索に要する演算量を大幅に削減できることを示した.
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