研究概要 |
本年度は,提案方式の核となる符号化技術の改良を中心に検討を加え,総合的な符号化性能の改善を図った.以下に主な検討項目とその成果を示す. 1.反復型動き補償予測の効率化 前年度に開発した反復型補償方式は,局所的な動き補償の反復によって予測画像の品質を徐々に改善する手法であり,後述のmatching pursuitsと共に提案方式の中核をなす技術である.本年度は動き補償が適用されるブロック境界で発生する歪の除去を目的としたオーバラップ動き補償や,複数の参照フレームを適応選択することで予測効率を改善するマルチフレーム動き補償の技術を導入し,再生画像の品質を1dB程度改善することに成功した. 2.Matching pursuitsに使用する基底関数の検討 Matching pursuitsは,反復的に選択される基底の線形結合によって信号を近似する手法である.動画像符号化に応用する場合,動き補償の残差信号の性質に適合した基底関数を用意することが,符号化効率の観点から重要となる.本年度は,これまで一般的に用いられたGabor基底のパラメータをフレーム毎に修正する方法や,斜めの輪郭成分に適した基底の導入について検討を加え,符号化効率の更なる改善を図った. 3.任意形状領域動き補償に関する検討 被写体の形状に即した領域単位に動き補償を適用する技術が近年注目を集めているが,一般には領域形状の伝送レートが増大するという問題があり,符号化効率の点で既存方式を上回る性能は得られていない.本検討では符号化済みの参照画像を領域分割の対象とし,更に反復型補償の技術を組み合わせることで符号化性能を大幅に改善できることを示した.
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