研究概要 |
本年度は,これまでに開発してきた基本アルゴリズムに改良を加え,総合的な符号化性能の改善を図った.以下に主な検討項目とその成果を示す. 1.非可分型基底によるMatching pursuitsの性能改善 提案方式の波形符号化部を構成するmatching pursuitsでは,符号化対象となる信号の性質に適合した基底関数を用意することが重要となる.本年度は斜め方向のエッジ成分にも表現可能な非可分型基底の導入に関して検討を加えた.また,非可分型基底を採用した際に問題となる演算量の増加を抑えるため,符号化パラメータを効率的に探索するアルゴリズムも開発した.その結果,従来の可分型Gabor基底を用いた場合と同程度の演算量で,符号化レートを8〜22%低減することに成功した. 2.算術符号を用いたエントロピー符号器の改良 これまで,動き補償およびmatching pursuitsに必要なパラメータの符号化には静的な可変長符号を使用してきた.これに対し,非ブロック符号の一種である算術符号はビット割り当ての自由度が高く,コンテクスト(文脈)モデルに基づいた適応エントロピー符号化の実装が容易であるという特長を有している.本年度は提案方式のエントロピー符号器を,高速な多値算術符号器として知られるレンジコーダに変更すると共に,各パラメータの特性に応じた確率モデルやコンテクストモデリングの方法について検討した.これにより符号化レートを更に4〜15%削減することが可能となり,最終的な符号化性能も最新の国際標準方式であるH.264と遜色ないレベルに達していることが符号化実験より確認された.
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