多次元・可変・非整数遅延ディジタルフィルタによる高精度画像補間

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14550379
• 研究機関: 東邦大学
• 研究代表者: 伊藤 登 東邦大学, 理学部, 助教授 (00237041)
• キーワード: ディジタルフィルタ / 非整数遅延 / 画像補間 / 多次元フィルタ / 解像度 / 再帰形フィルタ / 振幅応答 / 群遅延

研究概要

ディジタル画像の拡大と縮小に、空間領域では2次と3次多項式を用いた補間法が提案されているが、多項式の次数が低いため、再生した画像の画質が著しく劣化し、高精度の画像補間は困難である。補間精度を高めるために、多項式の次数を高くしなければならず、多項式の係数と再生画質の関係が明らかでないので、有効な解決法がまだ見当たらない。最近、遅延応答が非整数(サンプリング間隔の非整数倍)でかつ可変な可変非整数遅延フィルタは音声の高精度符号化とディジタル通信における受信信号の時間ずれの微調整に有効であることが注目されている。可変非整数遅延フィルタを用いれば、任意の時刻(1次元信号の場合)、または任意の空間点(画像信号の場合)における離散信号の値を可変非整数遅延フィルタによるフィルタリングの出力として求めることができるので、ディジタル信号の高精度補間が可能となる。従って、ディジタル信号の補間問題は時間領域と空間領域では、Sinc関数の近似問題となるが、周波数領域では、可変非整数遅延応答をもつ理想の可変非整数遅延素子の近似問題となる。また、画像補間を行うため、多次元可変非整数遅延ディジタルフィルタの最適設計と構成が必要となる。平成15年度の研究では、多次元の基礎となる1次元全域通過(all-pass)可変非整数遅延フィルタの最適設計法を開発した。本設計法の基本的な考え方としては、再帰形伝達関数で表現される全域通過非整数遅延フィルタを用いて、実際と理想の可変周波数応答の重み付き自乗誤差を最小化してフィルタ係数の最適解を求める手法である。全域通過可変非整数遅延フィルタの設計に関しては、台湾のDr.Tsengによる設計法があるが、本研究で提案した新しい設計法はDr.Tsengの方法と比べ、以下の利点がある。
(1)設計アルゴリズムは閉じた形であるため、設計に要する計算量は極めて少ない;
(2)大域的最適解が得られ、理論的にその最適性が保証される。
設計例を用いて本設計法の有効性を実証した。

研究成果

• [文献書誌] Tian-Bo Deng: "Design and parallel implementation of FIR digital filters with Simultaneously variable magnitude and non-integer phase-delay"IEEE Trans.Circuits System II. 50. 243-250 (2003)
• [文献書誌] Tian-Bo Deng: "Design of linear-phase variable 2-D digital filters using matrix-array decomposition"IEEE Trans.Circuits Syst.II. 50. 267-277 (2003)
• [文献書誌] Tian-Bo Deng, Eiji Okamoto: "SVD-based design of fractional-delay 2-D digital filters exploiting specification symmetries"IEEE Trans.Circuits Syst.II. 50. 470-480 (2003)
• [文献書誌] Tian-Bo Deng: "SVD-Based important theorem for designing variable fractional delay filters"Proc.ISPACS 2003. 1. 446-449 (2003)
• [文献書誌] Tian-Bo Deng: "SVD-based design and new structures for variable fractional delay filters"Proc.ICICS-PCM 2003. 1. 3C4-1-3C4-1 (2003)
• [文献書誌] Tian-Bo Deng: "SVD-based design of fractional-delay 2-D digital filters exploiting specification symmetries"第18回ディジタル信号処理シンポジウム講演論文集. 1. C2-2-C2-2 (2003)