ディジタル画像の拡大と縮小に、空間領域では2次と3次多項式を用いた補間法が提案されているが、多項式の次数が低いため、再生した画像の画質が著しく劣化し、高精度の画像補間は困難である。補間精度を高めるために、多項式の次数を高くしなければならず、多項式の係数と再生画質の関係が明らかでないので、有効な解決法がまだ見当たらない。最近、位相遅延が非整数でかつ調整可能な可変非整数遅延(Variable Fractional-Delay : VFD)フィルタは音声の高精度符号化とディジタル通信における受信信号の時間ずれの微調整に有効であることが注目されている。VFDフィルタを用いれば任意の時刻(1次元信号の場合)、または任意の空間点(画像信号の場合)における離散信号の値をVFDフィルタによるフィルタリングの出力として求めることができ、ディジタル信号の高精度補間が可能となる。従って、ディジタル信号の補間問題は時間領域と空間領域では、Sinc関数の近似問題となるが、周波数領域では、可変非整数遅延応答をもつ理想の可変非整数遅延素子の近似問題となる。また、画像補間を行うため、多次元VFDフィルタの最適設計と構成が必要となる。Lagrange補間に基づく1次元VFDフィルタは台湾国立交通大学のLiu-Wei両氏によって提案されたが、VFDフィルタの係数の計算式は理論的に証明されていない。平成16年度の研究では、我々はLagrange多項式を用いた補間多項式から出発し、Lagrange補間問題をVFDフィルタリング問題に帰着させることを示して、閉じた形のVFDフィルタの係数の計算式を理論的に証明した。更に、Lagrange型1次元VFDフィルタを2次元の場合に拡張して、2次元静止画像の高精度解像度変換への応用を試み、多数の画像補間例を用いて2次元Lagrange型VFDフィルタの高解像度画像補間の有効性を確認した。従来の零次補間、双1次補間、6項多項式補間と9項多項式補間と比べ、2次元VFDフィルタによる画像補間は精度が高く(補間誤差が小さく)、補間に要する計算時間が短く、システム実現にかかるコストも低いことが実証できた。
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