研究概要 |
高利得・低交差偏波特性をもつアンテナとして,2枚の軸対称な反射鏡からなるカセグレンアンテナがよく用いられているが,本研究では,副反射鏡および1次放射器のブロッキングによるサイドローブレベルの上昇を抑えることができる新しい鏡面系および1次放射器の設計法を提案している.鏡面系については,副反射鏡の開口径が波長に比べて十分大きくない場合でも精度良く設計するため,波動的な影響を考慮した最適化手法を用いた設計法を検討している.まず,副反射鏡によってブロッキングが生じた場合の最適開口面分布を2次計画法によって求め,これより幾何光学近似を用いて主・副反射鏡の鏡面座標に関する微分方程式を導き,数値的に解くことによってこの最適開口面分布を実現する鏡面座標を決定している.次に,こうして得られた鏡面座標を初期値として,非線形の最適化手法を用いて所望の放射特性が得られる鏡面形状を決定している.設計にあたって放射特性を正確に評価するために,鏡面上に誘起される電流分布を基にした解析法である電流分布法を用いている.また,開口面位相分布を広帯域にわたって一様にするために,光路長一定の条件を用いている.これより,非線形最適化の未知変数は,副反射鏡の座標成分と法線ベクトルによって定義され,光路長一定の条件を用いて主反射鏡の形状が決定されることになる.また,回転対称な主ビームと低交差偏波特性をもつカセグレンアンテナの一次放射系として,複モードホーンを取り上げ,ブロッキングの影響を最小限に抑えるため,ホーン開口面にビームウエストをもつホーンの設計法を提案している.これによって,鏡面系の設計において用いた理想的な1次放射パターンが容易に実現できることになり,利得低下やサイドローブレベルの上昇といった問題を充分小さく抑えることが可能となる.さらに,提案する鏡面系および1次ホーンをミリ波帯で設計し,放射特性を実験的に評価している.その結果,測定評価したカセグレンアンテナの放射特性は,計算値と比較的よく一致し,提案している方法の妥当性を確認している.一方,アンテナの放射特性の評価法として,円筒面走査による近傍界測定を取り上げ,振幅だけの測定で遠方界特性を評価できる最適化手法を用いた方法について検討し,実験的に妥当性を検証している.本測定法は,位相変動による影響を受けないため,ミリ波帯でアンテナの放射解特性を評価する場合に特に有効である.
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