研究概要 |
無線LANの高度化に不可欠な技術であるビーム整形あるいはマルチビーム化について基礎的検討を行っている.まず,ビーム整形については,サービスエリアに応じたビーム整形を行うホーンアンテナについて検討している.ホーンの設計にあたっては,任意方向の利得が最大となるユニバーサル放射パターンから励振モード係数を求め,最適化手法を用いて円形領域全体を効率よく照射するホーンの形状を決定している.この方法を用いてX帯でホーンを設計,試作し,放射パターンを測定したところ計算値とよく一致することを確認している.ビーム整形の効果については,従来の単純なペンシルビームをもつ複モードホーンと比較し,カバレッジ内の最低利得を1dB以上高くできることを確認している.また,マルチビーム化については,これまで基本検討を行ってきたリクレクトアレイを引き続き取り上げ,広帯域化のためのマイクロストリップ素子の形状および配置法について詳細な検討を行っている.その結果,アレイアンテナのような配置では狭帯域になることが判明し,新たにこれまでない密に素子を配置する設計法について提案している.実際にリフレクトアレイアンテナを設計し,数値解析によって周波数特性を評価したところ,比帯域が30%以上の広帯域な特性が実現可能であることを確認している.さらに,アンテナの放射特性の評価法として,位相測定の不要な方法について検討している.従来,レーダの分野では,フェーズドアレイの素子電界ベクトル回転法が電力のみを測定する方法としてよく用いられており,この測定法をホーンアンテナの開口面分布測定に応用することを提案している.実験的な検討として,標準ゲインホーンを用いた測定を行い,通常の遠方界測定結果あるいは計算値と比較的一致する良好な結果が得られている.
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