研究概要 |
高信頼な量子情報通信システムを構築するためには量子情報の信頼性を可能な限り確保する必要があり,そのための重要な技術として量子誤り訂正符号化技術に大きな注目が集まっている.本研究では,量子誤り訂正符号に関して理論的かつ体系的な立場から検討を行い,効率の良い量子誤り訂正符号を統一的に構成し得るような有効な方法を考案することを目標としている. この目標に向かって検討を進め,平成14年度および平成15年度には次のような結果が得られた. ・CSS符号タイプの量子誤り訂正符号を対象としてバースト誤りを訂正できる効率の良い量子誤り訂正符号を計算機で探索した結果,具体的にいくつかの新しい符号を求めることができた. ・Steaneによって提案されている拡張CSS符号タイプの量子誤り訂正符号についても前項と同様の検討を行ったが,新しい結果は得られなかった. これらの結果を踏まえて,平成16年度には新しい取り組みとして以下のような視点から研究を進めた. 周知のように,リードソロモン符号(RS符号)は古典符号の中でも極めて重要な符号であり広く実用化されている.このRS符号に基づいた量子誤り訂正符号の構成法がGrasslらによって提案されている.一方,(拡張)CSS符号タイプの量子誤り訂正符号を構成する際に利用されている基本的な考え方は,符号間の関係,特に,部分符号の関係,を巧妙に利用することにあると考えられる.そこで,RS符号から得られる一般化RS符号(GRS符号)および部分空間部分符号(SSRS符号)に着目し,これらの符号を基にして新しい量子誤り訂正符号が構成できるか否かを明らかにするための基礎的な検討を行った.すなわち, (1)GRS符号に対してGrasslらの構成法を適用するために,GRS符号の自己双対性について検討した. (2)SSRS符号が潜在的に有する誤り訂正能力について検討した. 現時点ではこれらの検討結果から最終的な結論は得られていないが,GRS符号およびSSRS符号を利用して新しい量子誤り訂正符号を得る可能性はあると予想している.
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