研究概要 |
初年度には,本研究の重要な構成要素となる触子マトリクスの開発を試みた.エポキシ平板に触子マトリクス素子を埋め込み,二次元視覚情報インターフェースを構成,実装する.触子は,超小型ピンであり,視覚障害者がこれを指で触れて情報を知る.コンピュータからの制御信号に対応して,おのおのの触子は平板面から突出,引き込み動作をする.特に触子の素材の選定が最も重要で,重点目標とした.ベロプスカイト型結晶を用いた圧電セラミクス誘電体結晶に電界を加え,長さ方向に発生した物理的変位をアクチュエータとして伸縮する性質を利用する.同圧電セラミクス誘電体には,チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛等多数あり,これらの素材を用いて触子を試作し,実験的に性能を評価している最中である.これまでの実験では五種類の素材と形状を候補とし,各々の素材をもとに実際に触子マトリクスを試作して,平板に埋め込んでその変位量,加工容易性,耐久性,安定度,電気的特性などを計測し,多数の触子の試作を試みている.また圧電セラミクスに電圧を加えるための高圧DC電源,および共振特性を利用してなるべく低電圧で最大の物理変位を得るために,別途制御駆動回路を設計製作し,現在試験中である.駆動時にステップ状に充放電電流が流れるが,駆動回路には,ゲート制御電圧が小さくてすみ,かつ高耐圧の電界効果トランジスタ素子(FET)をマトリクス状に用いた.制御回路は,コンピュータと高速通信を行い,駆動回路を介して触子を突出させる.これによって視覚障害者に正確な情報を伝達させる.次年度には,開発した制御ソフトウエアとハードウエアを接続して,実際に視覚障害者の方々に使用していただき,市街におけるフィールドテストを実施し,システムの妥当性と性能を評価し,得られた知見は論文として公表する予定である.
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