研究概要 |
本研究は,非線形最適化の代表手法であるレーベンバーグ・マルカート法(LM法,LMM法)を高速化・安定化するため,従来の拘束条件(C1)[マルカート数×単位行列]を,(C2)[対角行列]及び(C3)[ヤコビ行列の積の平方根行列]へ拡張する方法を提案し,その有効性を明らかにした。同時に,本研究を開始した動機であり実際的な応用である,表面張力測定システムにおける効用を示した。 表面張力測定システムへの適用では,従来法より3〜10倍の高速化を実現して,その結果を論文発表し,手法の特許出願を行った。同時に,福岡県産業・科学振興財団からの援助により,測定装置の製品化を行った。本装置では,実用上十分な高速化を達成した。 次に,提案法の幾何学的な解釈として,対象コスト関数の表面形状に適切に当てはまる制約条件を課すことによって収束の高速化と安定化を実現できることを明らかにし,多くの数値シミュレーションによりその効果を示した。特に拡張法(C3)はコスト関数の形状に添う滑らかな収束が可能であり,多重の局所最小値検索において,初期値による検索領域の制御のために有用なことがわかった。 以上の研究成果を電子情報通信学会英文論文誌A分冊へ投稿(2004年1月5日)した。報告書の様式14に記したように,2名の査読者のうち1名は「大変興味深く論文として採録するのが妥当…」との意見だった。しかし他の1名は,「本方法は擬似ニュートン法と形式上は等しいLMM法である」という本論文の主張を根拠も無く「ただの擬似ニュートン法」と否定し,さらに過制約条件の1次方程式の解法に反する「LMM法の修正ベクトルを与える式の解がゼロ」という理由から,本手法が無効であると述べた。その結果,本投稿論文は不採録となった。上の理由は,従来のLMM法も全部無効とすることに等価で,明らかな誤りである。現在,担当編集委員と連絡を取り,再投稿を準備している。
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