研究課題
基盤研究(C)
光源周波数が安定したコヒーレントOTDRで得られるレイリー散乱波形がジグザグ波形を呈することを利用した高感度歪(または温度)分布測定法について、計算機シミュレーションおよび実験により基本検討を行った。計算機シミュレーションを通じて、雑音、光周波数の変動、および偏波変動が測定性能に及ぼす影響を検討した。その結果、本測定法を実現するためには、10dB以上の信号対雑音比を確保し、光周波数の変動を±10MHz以内に抑えることが必要なことがわかった。また、光ファイバの僅かな複屈折に起因してレイリー散乱波形が光パルスの偏波状態に応じて変化することを示し、この影響を除去するためには、パルス光およびローカル光の両方について偏波スクランブルが必要なことを明らかにした。さらに、これら条件を満たせば、距離分解能2m(0.2m)、歪分解能0.1με(1με)で、長さ40km(8km)の光ファイバの分布測定が可能なことを示した。この歪分解能は、ブリユアン散乱を利用した歪分布測定法に比べて、1〜3桁優れている。実験により、(1)環境変化のない状態に置かれた光ファイバから戻るレイリー散乱光は常に同じ形のジグザグ波形を示す(波形安定性)、(2)歪を受けて変化したレイリー散乱波形は、適度に光周波数を変えると元の波形に戻る(波形復元性)、を初めて確認し、提案した分布測定技術の原理を検証した。これまでの研究により、極めて高感度な歪(または温度)分布測定が可能なことが確認された。しかし、実際の測定は容易ではない。その理由は、レイリー散乱波形を復元する光周波数を、指針を持たずに見つけなければならないからである。この点を改善できれば、本測定法は極めて魅力的な測定法として認知されることになろう。
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すべて 雑誌論文 (2件)
IEICE Transactions on Communications Vol.E89-B,No.5
ページ: 1722-1725
IEICE Transactions on Communications Vol.E89-B, No.5