研究概要 |
昨年度までは,臓器として消化管運動,特に胃運動について計測システム・実験・分析等を行い,システムの計測性能・計測対象の特性を調査した。その結果,食塊が,噴門・幽門を通過するときの臓器振動を体表面上のセンサーで把握することが可能であることを明らかにしてきた。しかし,胃の煽動運動は,非常に低い周波数域にあり,現在のセンサーの感度外であることが分かった。現在,新たなセンサーを調査中である。 一方,本年度は新たな計測対象として,肺の呼吸運動について,現在の測定システムを適用した。呼吸器系疾患として,現在,慢性閉塞性肺疾患(COPD)が世界の死亡原因の第4位にランクされている。喫煙率が高く,高齢者が多い日本では今後ますますCOPD患者が増加すると思われる。呼吸器の簡易診断・検査法としては,スパイロメータがよく用いられる。しかしこの手法では,最大の呼吸筋である横隔膜の状態を知ることができない。一方COPD患者は肺胞壁が壊れてのう胞ができるため,肺が膨張し横隔膜を押し下げ,同膜が平らになり,殆ど機能しなくなっている。このような程度も含め同膜の状態の診断が,患者の病状・リハビリ効果を知る上で重要となっている。本計測システムは横隔膜運動から発生する振動を把握することを目的に適用した。その結果,横隔膜の殆ど動かない患者と健常者との差異と思わる現象を見出した。今後,実験・考察を進めこの現象を確認するとともに,モデル化・定量化すること,リハビリ効果の指針として利用できないか,などを検討する。
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