研究概要 |
本研究では,特許出願中の設計手法を利用した適応ノッチフィルタとブラインド信号処理(AMUSE法)を利用したマイクロホンアレーシステムの構築することにより,単一システムで複数音源の同時分離抽出を実現することを目的としている。本年度は,コンピュータディスプレイの周囲へ装着することを想定した方形アレーを検討した。コンピュータディスプレイ前の音源の同時分離抽出を想定した場合,平面アレーシステムと音源の距離を考慮し,球面波として取り扱う必要があると思われる。そこで,複数の音源を同時分離するアルゴリズムの平面波モデルと球面波モデルを構築し,その性能を確認した。具体的には,ディスプレイの前0.5mに位置する話者(音源1)と話者とは異なる方向で0.6mの位置に雑音源(音源2)が存在する状況において,球面波モデルの音源方向推定誤差は平面波モデルの場合の結果より話者の音源方向の推定は明らかに良好であった。また,雑音源の方向の推定は誤差があるものの球面波モデルの場合が良好であった。さらに,二人の話者(音源1,2)が同時に発話した状況を想定して分離抽出のシミュレーションを行った。音源1に対して音源2のパワは-5dBに設定した。音源1に関しては平面波モデルにておいては,ブラインド信号分離の段階で9dB,提案手法では8dBであったが,球面波モデルにおいては,それぞれ12dBと14dBに改善され,提案手法の球面波モデルの場合が最も良好な結果が得られた。しかし,適応ノッチフィルタの特性により,低周波数域と2,500Hz付近において減衰が生じていることがスペクトログラムとコヒーレンシーの両者で確認された。更に上記多入力アレーシステムの研究に並行して,2入力のアレーシステムとして,ダミーヘッドマイクロホンを利用したシステムについても研究をすすめ,人間の聴覚を模した高い空間分解能をもつものが構成できつつある。
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