グローバルな気候変動の解明に必要な宇宙からの降雨観測は、衛星搭載降雨レーダによって最も定量的で信頼のおけるデータが得られると考えられている。しかし、熱帯降雨観測(TRMM)衛星搭載降雨レーダの観測結果からわかるように、特にチベットやアンデスなどの山岳地帯では、非常に小さな発生確率ではあるが地表面エコーを降雨エコーと誤判定することがあり、レーダ工学上重要な問題となっている。本研究の最終目標は、衛星搭載降雨レーダの観測で地表面エコーと降雨エコーとを高精度で分離し、降雨エコーの下端位置、すなわち地表面エコーの上端位置を決定する手法を開発することであるが、そのためには正確なデジタル高度情報を用いる必要がある。幸いなことにTRMM衛星搭載降雨レーダ自体が地表面高度計であり、そのデータを用いて既存のデジタル高度情報に補正をかけてより正確なものを求めることが可能である。平成15年度は、TRMM衛星搭載降雨レーダの一ヶ月間のデータを用いて水平方向分解能が2kmのデジタル高度マップを作成し、既存のデジタル高度情報としては最も高精度であるといわれているスペースシャトル・エンデバーのミッションで作成したSRTM (Shuttle Radar Topography Mission)の30秒角の全球データであるSRTM30(水平方向分解能1km)と比較した。この比較の結果、精度が良いといわれているSRTM30にもチベットやアンデスなどにおいて大きな誤差が含まれていることが判明した。本研究の最終目標である衛星搭載降雨レーダの観測における地表面エコーと降雨エコーとの高精度での分離のためには、TRMMの後継機として計画されているGPM(全球降水観測)衛星搭載降雨レーダへの適用を考えても、デジタル高度マップは2kmの水平方向分解能があれば十分である。次年度は、SRTM30の補正をTRMM衛星搭載降雨レーダのデータで作成したデジタル高度マップで行い、それを用いて最終目標である地表面エコーと降雨エコーとの高精度での分離を達成させる予定である。
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