研究概要 |
茸の至適成育条件(培地・温度・湿度・光など)に関して、従前より生産現場の経験的側面からの検討は十分行われているが、科学的側面の検討は大変遅れている。申請者らは、茸の成長の活性化と密接な関係があると推定される生体電位信号を指標とし、光刺激条件(波長,輝度,照射方法など)や形態形成との対応関係を調べ、至適成育条件を工学的側面から究明し茸栽培制御用の新しいタイプの光源装置の開発を試みている。また、培地内部の菌糸の発達をMRI装置により非破壊的に撮影した。更に、光質変化が形態形成に及ぼす影響に関し、さらに踏み込んだ分子的機構である遺伝子解析による発現遺伝子の解明にも着手した。得られた成果の概要を以下に記す。 1.光刺激因子の系統的な変化 実験の趣旨に対応した自作のインキュベータを用いた、光刺激による生体電位の更なる精密自動計測システムの改良を実施した。 (1)強さ・明暗刺激間隔:光刺激の強度や規則的な明暗刺激間隔などによる生体電位に及ぼす影響力に関する知見はすでに得ているが、成長制御(形態形成)に最適な条件の確立までには至っていない。系統的な外的刺激実験を実施した結果、連続照射光よりも間欠照射光の方が形態形成に与える影響力が強いことを突き止めた。 (2)波長(光刺激の色):刺激光源の波長が、菌枝の徒長や菌傘・枝などへの変色効果へ与える影響について、これまでに得られた結果をほぼ検証できた。 2.MRI装置を用いた菌糸の撮影 地下系である培地内部の菌糸の発達に関して、植菌直後から子実体が胞子を落とすまでの茸の一生の期間において、MRI装置を用いて非破壊的に系統立てた断層画像に成功した。 3.遺伝子解析 光形態形成と細胞の分子機構との関係について、発現遺伝子であるメッセンジャーRNA(mRNA)の検出をDD法で比較検討中である。
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