研究概要 |
本年度においては,まずEQCM計測システムの構築を行い,次に本システムが同時に行えるふたつの計測法である電気化学計測とQCM計測の基礎特性を調べた後,センシングデバイスである水晶振動子表面に感受性が高い感応膜を形成させる方策を探った。 まずEQCMアナライザーを用い電気化学計測とQCM計測を行ってみたところ,QCM計測において安定性を欠き,ソフトウェアとセル構造に問題があることが判った。ソフトウェアの問題は,実験手順とデータ処理により対処した。セルの問題は,テフロン製の強い疎水性と溶液が均一になりにくい構造により不安定化することが判り,塩化ビニル製のセルに設計し直した。次に未被覆の水晶振動子を用い,電気化学計測とQCM計測をそれぞれ行い,従来の結果と整合性があるかどうか確認したところ,QCM計測において過去の結果に比べ小さな応答しか得られなかった。この違いは水晶振動子の金電極の表面状態の違いによる部分が大きいことが判り,金表面を研磨することにより過去と矛盾しない結果を得た。 上記の対応の後味物質を添加し,感受性が高い感応膜を水晶振動子表面上に安定に形成させる方策を探った。当初,実績のある脂質,支持剤および可塑剤を混合した脂質高分子膜を水晶振動子表面に形成させた。しかし,脂質/支持剤/可塑剤の配合比などパラメータを変化させたが,十分な感度の向上が得られなかった。そこで,微量の脂質を水溶液中に分散し,水晶振動子表面に物理吸着させて脂質膜を形成する方法を試みたところ,苦味物質に対して1桁以上の感度向上が得られた。また水晶振動子表面を修飾して疎水性を高めると,さらに特性改善が図れることも判った。現在,この物理吸着法の最適条件を探っており,さらに本来の目的であった電気化学計測とQCM計測の組み合わせ測定を行う予定である。
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