多数の微小振動子を並べたアレイ型トランスデューサを用いて、各素子の駆動時刻を制御することで、任意のモードのLamb波を発生することができ、逆に、各素子での受信波を時間遅延・合成することで、特定のモードのLamb波を選択的に検出することが可能である。これを実証すると共に、いろいろなモードのLamb波を用いて高性能な検査法を確立する目的で下記を実施した。 (1)板厚1〜5mmの範囲でのLamb波を発生・検出を目指して、中心周波数1MHz、半値幅0.7MHz、83素子のアレイ型トランスデューサを設計し、製作した。 (2)トランスデューサを板材に安定して接触させるための機構として、多関節型のロボットを導入した。 (3)模擬欠陥を設けた28種類の試験用板材を製作した。 (4)電子走査のための装置の設計を行い、送受信部の製作を進め、装置の枠組み、回路基板の設計・製作を実現した。 (5)模擬欠陥として直径6mmの穴を空けた板厚2.3mmの試験鋼板に対して、パルス駆動によって、送受信とも同じモードで実験を行った。その結果、モードを制御できていることを確認した。 (6)実験と比較するため、コンピュータ・シミュレーションを行った。 初年度にトランスデューサを検討した結果、その仕様を当初計画より大きく変更し、その製作費が見込みよりかなり増加したため、本研究では電子走査部を簡略化して実験を行った。今後、電子走査部をパルス駆動ではなく、当初の計画通り、正弦バースト波で動作するようにし、実データの収集、分析、新検査法の確立へ向けて行く計画である。
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