研究概要 |
音波伝播時間のガス温度・流速・性状(分子量等)依存性に着目した計測技術は,従来,超音波を用いて実用化されている。しかしながら,超音波利用の方式では伝播特性の制約から,屋外,高温・高ダスト環境,大型建築物等への適用には限界がある。そこで,報告者らは,遠距離伝播特性が良好な可聴周波数域を用いた計測技術の開発を進め,波長増加による計測分解能の低下に対処する信号処理法・送出信号波形の研究を行ってきた。ことに,本研究ではでは,非線形状態推定理論の応用により,可聴周波数域の音波を用いた空間内ガス温度・流速・性状分布計測法(いわゆるCT:Computed Tomography)の確立と,その屋外等,大型空間への適用を達成した。 本研究成果の具体的内容として,平成14年度には,実験用ダクトにおいてスピーカ・マイクロフォン12対程度のガス温度・流速・性状分布CT装置を試作し、本研究に係わる信号処理法・状態推定法・音響系構造等の有効性と装置の総合性能(計測値の精度,空間分解能,非定常状態への追従性等)を検証した。また,装置の実用化に最低限必要なハードウェアの仕様(計算機の性能,音響系の出力・周波数特性)を解明した。 続いて,平成15年度において,前年度に開発したCT装置を大型空間用に改造して,運動場,体育館等に設置し,人為的に温度分布等を発生させて精度,分解能,所要ハードウェア仕様等の関係を評価した。ことに,実用上許容できる音響系出力における十分な計測性能を達成することができた。
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