研究概要 |
本年度は,まず視覚サーボ問題の数学的なモデリングをおこなった.具体的には,視覚サーボの対象となる物体の動きが透視変換を経た観測であることと,ロボットマニピュレータのリンク座標間の変換を考え合わせることで,カメラから得られる2次元の視覚情報から3次元空間中での物体の動きを記述した. つぎに得られた数学モデルに基づき,制御系設計のための問題設定をおこなった.まずカメラを用いた画像計測においては,さまざまなパラメータの誤差や離散化の影響などによりモデルに不確かさが存在する.この不確かさの影響を,周波数重みを伴った外乱として捉えて,それらの影響を低減化する制御系の構成問題を設定した.一方,ロボットマニピュレータの動的制御においても,やはり同様にモデルパラメータにおける不確かさは避けられない.したがって,このような不確かさに対しても望ましい追従特性を達成するロバストな制御則の設計問題を,H_∞最適性を考慮した非線形H_∞モデル予測制御の枠組で考えた. そして設定された制御目的を満足するように,制御系設計をおこなった.まず,ロボットマニピュレータのダイナミクスの性質のひとつである受動性に着目することで,系のエネルギー関数を自然に定義することが可能となる.そこで,フィードバックゲインを適切に調整し,このエネルギー関数をモデル予測の枠組みにおける最適性を達成するように整形することでロバスト化を図り,非線形H_∞モデル予測制御系設計を進めた.このとき制御則の設計は,現有の制御系設計のためのソフトウェアを積極的に援用しておこなった.これと同時に,ロボットマニピュレータ装置とディジタル制御装置,およびカメラ・画像処理装置で構成される現有の視覚サーボシステムに,オブザーバとモデル予測制御を実現させるための高速ディジタル制御装置とリアルタイム制御装置を組み入れて,基本的な動作が可能となるように実験の準備を進めた.
|