研究概要 |
本研究の目的は,多目的制御系,ポリトープ型不確かさに対するロバスト制御系,LPVシステムに対するゲインスケジューリング制御系の各設計問題をパラメータ依存のLyapunov関数で解く新しい方法論を構築することにある.与えられたBMI問題を仮想パラメータを導入しながら仮想空間に拡張し,もとのBMI変数を異なるLMI項に分離し,結果として,複数の不等式制約からなる制御系設計問題を異なるLyapunov変数,すなわちパラメータ依存のLyapunov関数で解くことを目指す.この研究の基本的なアイディアは,「消去補題」の逆適用にある.従来と発想を変え,逆適用により「与えられた問題を仮想空間へ拡張」し,従来の順適用で達成されなかった本研究の目的を達成する. 平成15年度は,安定化問題,H_2制御問題,H∞制御問題をこの方法により拡張空間で定式化し,これらの問題をパラメータ依存Lyapunov関数を許容して解くことに成功した.また,平成12年度〜平成13年度の奨励研究(A)の成果である「準不定二次項の逐次LMI化」との比較を同一数値例を用いて行った.その結果,多目的制御系設計問題では「準不定二次項の逐次LMI化」のほうが良い性能を示す傾向にあったが,現段階でこの方法が適用できないロバスト制御,ゲインスケジューリング制御については,本研究の「消去補題の逆適用による拡張空間での制御系設計」が従来の共通Lyapuov関数による方法よりかなり良い性能を示し,その実用性が確認された.なお,Lyapunov関数Φ=x'Pxに対し,ゲインスケジューリング制御ではPを条件式に含ませる必要があるが,この点についても検討し,Pを含む不等式条件を行列ポリトープの端点条件に帰着させる方法を得た.
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