研究概要 |
本研究の目的は,内部永久磁石形同期電動(IPMモータ)の位置センサレス駆動が可能な制御回路を,ワンチップでしかも全デジタルで実現可能な制御チップを開発することである。開発する制御チップには,研究代表者の考案したIPMモータの突極性に基づくセンサレス位置推定法を組込む。この制御チップにより,IPMモータの電力線をインバータに接続するだけで,位置制御系や速度制御系を構成することが可能となる。 平成14年度の研究においては,現有の3.7kWのIPMモータを駆動するための主回路,制御チップとして使用する20万ゲートのFPGAを搭載した評価基板に接続するインターフェース基板の設計製作を行ない,実験に必要なハードウェア部分の開発ならびに動作確認を終了していた。 平成15年度においては,以下の研究を行なった。 1 20万ゲートのFPGAの中に実現する,DSPコア,リプル電流検出用論理回路。PWM信号発生回路をハードウェア記述言語(VHDL)を用いて開発し,動作検証を行なった。さらに,開発した論理回路が他の制御ブロックと組み合わせた場合においても適切に動作できるかどうかについても検証した。 2 制御チップの心臓部であるDSPコアで実行する制御ソフトウェアの開発を行なった。この制御ソフトウェアでは,PWMインバータのリプル電流の取りこみ,位置推定演算,PWM信号の発生を,400μsの制御周期で演算することができ,従来のシステムの3倍以上の高速化を実現した。 3 開発した駆動システムを用いて実験を行ない,位置推定誤差はバラツキ±0.5度(電気角)以内,平均値で±1.1度以内の良好な位置推定特性が得られることを確認した。また,位置センサレス駆動システムにおいても20rad/sの位置制御が可能であること,推定位置を用いたモータ軸の位置制御による固定(サーボロック)が可能なことも確認した。 開発した制御チップは,異なる電動機定数を有するIPMモータに適用する場合においても,制御パラメータの調整が必要無く,また制御回路の大幅な小型化や良好な待ノイズ性などが期待できることから,実用化が期待される。
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