研究概要 |
現実の制御対象をモデリングかつ制御則設計してうまく動かすことができるかは,対象に関して入手できている情報をいかに有効に最大限活用できるか,にかかっているといってよい.本研究は,このような事前情報のうち,制御対象と何らかの関わりをもつ数学モデル(事前情報モデルと呼ぶ)に注目し,新たに得られた対象に関する情報と共に事則情報モデルを対象のモデリングと制御則設計に積極的にかつ有効に利用する理論的方法の導出とそれを動作点の移動を考慮した非線形システムのモデリングと制御への適用を最終目標とし,今年度はつぎの研究を行った. 時系列モデル同定法として,これまでに研究代表者らが提案していた手法の中に,スペクトルの事前情報を用いる最小相互エントロピー法があり,この方法は,事前情報と新たな時系列データを用いて,Kullback-Leibler情報量に基づく相互エントロピーレートを最小化することで,事前情報モデルを陽に用いた時系列モデル同定法となっている.この最小相互エントロピー法と再帰的かつ高速なスペクトル推定アルゴリズムであるBurg法を結びつけ,事前情報を用いる新たなスペクトル推定アルゴリズムを提案し,音声可視化に適用することでその実用性を検証し,研究発表を行った.この方法を外生入力が存在する場合のシステム同定問題に拡張することを検討中である. さらに,研究代表者らが提案していた補償法を用いた同定法の理論的強化についても検討を行い,また雑音が存在する場合についても検討中である.
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