研究概要 |
一般に,鋼・コンクリート複合構造における応力伝達はずれ止めを用いて行われている.これに対して,鋼・コンクリート接触面の支圧や摩擦の影響は考慮されない場合が多い.しかし,種々のタイプの鋼・コンクリート複合構造の力学性状をより合理的に把握するためには,まず,その接触面での応力伝達性状を明らかにする必要がある. そこで本研究では,鋼・コンクリート接触面での付着作用を,粘着(接着)作用,摩擦作用および機械的作用の3つに分けて考え,鋼・コンクリート複合構造の接触面の付着性状を,鋼板をコンクリートブロックで挟んだ要素試験体を用いた実験により確認することを試みた.実験においては,鋼とコンクリートとの接触面の状態として,平鋼板のみを用いたもの,平鋼板にスタッドを溶植したもの,また,それぞれの鋼板とコンクリートの間にテフロンシートを挟んだものの4種類の試験体を製作した.そして,支圧力をパラメータとして鋼板とコンクリートの接触面接線方向の荷重(摩擦作用と機械的作用)とずれの関係を調べた. 本研究を通して得られたおもな知見を以下にまとめる. 1.摩擦作用のみおよび機械的作用のみを有する試験体の最大荷重の和で,両作用が存在する試験体の最大荷重をほぼ表現することができた. 2.ここで用いた支圧力の範囲では,支圧が摩擦作用には影響を及ぼしているが,機械的作用にはほとんど影響を及ぼさないことがわかった. なお,鋼とコンクリートの接触面を再現する試験体の製作が難しく,試験体の脱型や養生が接触面の摩擦作用に影響を及ぼしていると考えられるので,今後は,試験体の製作や脱型に工夫を施すとともに,さらに広範なデータを蓄積することが必要である.
|