近年、鋼構造物の溶接継手からの疲労き裂の発生が数多く報告されている。疲労き裂は放置すると進展し、鋼構造物の崩壊に至る可能性もあり、疲労き裂の進展を防止あるいは遅延するための補修および補強が重要である。 本研究では、炭素繊維強化プラスチック板(以後、CFRP板と記す)に着目し、疲労き裂の補修に用いることの可否について実験的に検討する。 平成14年度は、CFRP板とストップホールを併用することによる相乗効果を検討するために、試験片には中央に疲労き裂を想定したソーカットを設け、その先端にストップホールに相当するφ4mmの円孔を明けた。き裂部の全長aは25mmである。CFRP板の長さは100mmとし、CFRP板の幅cは10mm(a/c=2.5)と25mm(a/c=1.0)の2種類とした。これらの試験片と無補強試験片を用いて疲労試験を実施し、き裂の再発生の有無、強度などについて比較検討した。 疲労試験の結果、無補強の場合は、作用応力範囲がΔσ=90MPa以下であれば、き裂の再発生を防ぐことが可能であったが、a/c=2.5の場合はΔσ=100MPa、a/c=1.0の場合はΔσ=130MPaでも、き裂の再発生を防止することが可能であった。また、a/c=2.5であっても応力範囲が低いところでは寿命が急増しており、補修効果が顕著に現れていた。a/c=1.0の場合は、a/c=2.5よりさらに高い応力範囲域でも補修効果が認められた。なお、a/c=2.5とa/c=1.0のS-N線の傾きは同程度であった。 以上より、CFRP板は疲労き裂の補修に適用できる可能性が高く、実用化の可能性が高いことが明らかとなった。次年度は、ストップホールを併用しない場合について検討したいと考えている。
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