昨年度は、ストップホールと炭素繊維強化プラスチック板(以下、CFRP板と記す)を併用した疲労き裂の補修工法に関する研究を行い、この工法の実用性の高いことを明らかにした。本年度は、疲労き裂の補修にCFRP板を単独で用いることの可能性について実験的に検討した。 本研究では、実際に鋼部材に発生した疲労き裂を対象とするため、幅100mmの試験片中央に長さ10mmのソーカットを設け、繰返し荷重を作用させ、ソーカットから疲労き裂を発生させた。ソーカットと疲労き裂の長さの合計が約25mmに進展した時に載荷を止め、これを無補修試験片(C-1シリーズ)とした。疲労き裂に補修材として貼付するCFRP板の長さは100mmとし、CFRP板の幅cは10mm(C-2シリーズ)と25mm(C-3シリーズ)の2種類とした。CFRP板の接着にはパテ状エポキシ樹脂接着剤を用いた。鋼板およびCFRP板の厚さは各々6mmと1.2mmである。 実験の結果、以下の知見が得られた。 1 CFRP板を単独で疲労き裂の補修に適用する場合、き裂の再発生を抑制することはできなかった。しかし、延命化には十分な効果があった。 2 き裂部に対してCFRP板の幅が大きいほうが補修効果は高くなった。しかし、CFRP板の幅とき裂長さとの比c/a=0.4の場合でも応急処置としては十分実用性があると判断された。 3 作用応力範囲の高い領域の方が、CFRP板の補修効果は大きかった。 以上より、CFRP板は単独で疲労き裂の補修に用いても実用性が高いことがわかった。
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