研究概要 |
本研究は,近代木橋の構造性能評価に基づき,性能照査型設計法の適用とその具体的な性能規定を開発することを目的として,3年間にわたり実施した. 本研究の遂行で明らかになった事項を以下に示す. 1.近代木車道橋および歩道橋の6橋に対する実橋実験データの収集によって,応答加速度,応答速度,振動変位,静たわみなどの静的・動的特性や構造性能を明確にした.さらに,設計係数(衝撃係数)は安全側の値が採用されていること,木歩道橋の振動の実態把握から振動使用性は特に問題がないことなどが確認された. 2.過去の実験値である23近代木橋を検討した結果,特に鉛直曲げ1次固有振動数から剛性を評価すると近代木橋は鋼橋やコンクリート系橋梁と同等な剛性を有していること,減衰性能も一般的な橋梁と同程度であることなどが判明された.また,近代木車道橋の動的応答係数を性能照査型設計法における性能規定への適用法を検討した結果,支間長によって低減する性能型衝撃係数の規定が提示できた. 3.走行する大型車両を3次元11自由度系モデルにした近代木車道橋の3次元動的応答解析法の完全な定式化を検討し,世界最大の近代木トラス車道橋(かりこぼうず大橋)を事例に,実験での振動応答波形と動的応答解析結果との比較を行い,精度の高い動的応答解析法をほぼ構築することができた. 4.歩行者が走行する近代木歩道橋の3次元動的応答解析法を定式化した.下路アーチ木歩道橋(神楽橋)の解析事例では,解析値と実験応答波形の最大値に若干の差異が生じており,解析値の精度を高めることが今後の課題として残されている. 以上の動的特性と構造性能評価に基づいて,総合的かつ統一的な構造パフォーマンスを明らかにすると共に,近代木橋に適した性能照査型設計法と具体的な性能規定の一部を開発することができた.
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