研究概要 |
本研究は,アルカリ骨材反応等により劣化した鉄筋コンクリート部材(RC部材)の力学的特性である部材耐力および変形能について,離散化解析法による非線形解析法を用いて解析的に明らかにし,それらの力学的特性に関する知見を提供することを目的としている。 平成15年度の研究では,14年度に検討した劣化したRCばりのモデル化である(1)コンクリートの応力-ひずみ関係のモデル化,(2)コンクリート表面のひび割れのモデル化,(3)コンクリートと鉄筋の付着のモデル化を導入したハイブリッド型変位モデル(HPM)の解析プログラムにより,変形挙動や破壊状況について,既往の実験結果,剛体-ばねモデルの解析結果と比較・検討し,本解析法の解析精度や妥当性,有効性について検討したが,以下にその検討結果について述べる。なお,本年度の解析プログラムでは,鉄筋の材料特性についてはバイリニア型とし,また,コンクリートと鉄筋の付着のモデル化の導入は行っておらず,コンクリートと鉄筋は完全付着としている。 (1)HPMの解析法は,弾性解析,すべり解析および張破壊解析で十分な解析精度が得られ,非線形解析の一手法として有効であると考えられる。 (2)HPMの解析法は,劣化したRCはりの変形を鉄筋の降伏以前までは精度良く近似できるが,それ以後は精度に問題がある。また,破壊状況も実験結果と異なっている。 (3)HPMを劣化したRCはりの解析に適用するためには,腐食ばりのモデル化のすべての導入が必要であり,特に鉄筋の材料特性やコンクリートと鉄筋の付着特性の導入が,変形挙動や破壊状況を精度良く近似するためには不可欠である。 以上の結果より,RBSMと同様の解析精度を得ることが今後の検討課題であり,精度の向上が確認されれば,劣化したRC部材の耐力と変形能の定性的な関係を解析的に求めることができると考えられる。
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