研究概要 |
黄鉄鉱が還元環境から酸化環境に曝されると,酸化が進行し水との接触により酸性の硫酸を生ずる。一方,方解石は溶解するとアルカリ性を呈することから,それらを混合することにより溶出水pHを制御できると予想される。そのため,黄鉄鉱を含有する粉砕岩石と方解石を含有する粉砕岩石とを種々の割合で混合し,バッチ法に基づく溶出試験を行った。その結果,黄鉄鉱含有量と方解石含有量との比率によって溶出水pHを制御できることが明らかになった。しかし,それらの溶解速度の相違により,pHが安定するまでには1ヶ月程度の時間が必要であることがわかった。ただし,pHが5以下の場合は,方解石の溶解により溶出する重炭酸イオンが二酸化炭素にまで変化するため,中和能を発揮できなくなることもわかった。 黄鉄鉱の酸化速度に関しては,室内試験および現地観測により評価した。バッチ法に基づく室内試験では,黄鉄鉱の酸化が表面における一次反応と内部からの拡散反応との2段階のメカニズムにより溶出が進行することから,それぞれ一次反応速度定数,内部拡散係数によって溶出現象が評価できることがわかった。また、黄鉄鉱の酸化に起因する酸性河川における流量と酸化生成物である硫酸イオン濃度変化から,年間あたりの黄鉄鉱酸化速度を評価した。その結果,硫酸流出量は,表層岩盤中の黄鉄鉱含有量,風化速度と関係し,年間単位流域面積km^2あたり24トンにまで達することがわかった。この量は,年間風化速度0.25mmに相当することが明らかにされた。上記の結果を踏まえ、黄鉄鉱および方解石の酸化溶出現象を模擬するためのカラム試験方法を検討し,来年度以降の実施にむけて準備を行っている。
|