本年度の研究実績は以下の通りである。 1.理論的研究:静的塑性理論の基礎式であるK tter式に、場所的加速度分布を導入した動的塑性理論の基礎を構築した。また、K tter式の近似数値解法である一般化極限平衡法(GLEM)のプログラムに場所的な加速度分布を導入できるように改良を加えた。 2.実験的研究:地震時の無限斜面表層土の挙動について、振動台を用いた模型実験を行い、実験結果を理論値と比較した。表層土の加速度や変移は理論による推定値と比較的よく一致したが、理論では説明できない、「斜面が長いほど塑性変移を生じるまでに多数の地震波を必要とする」という現象が発見された。 また、来年度からの研究の準備として、地震時の擁壁の挙動と基礎の挙動に関する、振動台上の模型を用いた基礎実験を行った。この結果、受動土圧問題や支持力問題では、塑性挙動が現れるにはかなり大きな加速度を与える必要があり、この過程で弾性挙動が支配的に生じてしまうことが観察された。次年度以降、理論を改良して弾性挙動を導入するか、実験に工夫を加えて塑性挙動の卓越した実験を行うかの、選択を迫られている。
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