研究概要 |
本研究では,高温環境に曝された粘性土地盤がどのような挙動をするかを遠心模型実験によって明らかにするとともに,その挙動がどのようなメカニズムによって引き起こされるかを解明することを目的に,次の4つのステップで研究を行う。ステップ1:高温環境を再現する遠心模型実験技術の確立,ステップ2:遠心模型実験による高温履歴を受けた粘性土地盤の挙動究明,ステップ3:高温履歴を受けた粘性土の力学特性および微視的構造の解明,ステップ4:高温履歴を受ける粘性土地盤の挙動メカニズムの解明。このうち平成14年度は,ステップ1の研究で高温履歴を与えることのできる遠心模型実験装置を製作した後,ステップ2と3の研究を実施した。 まず,模型地盤に20〜100℃の高温履歴を与えることのできる遠心模型実験装置を製作した。遠心装置は現有のミニドラム型のものを利用し,地盤全体および地盤中の所定の位置に任意の高温履歴を与えることのできる加熱装置と,ミニドラム本体を高温環境から保護するための断熱模型地盤容器を新たに製作した。地盤に高温履歴を与えると遠心装置自体が温度変化によって伸縮したり,計測装置が温度変化の影響を受けたりすることになるので,装置と計測装置のキャリブレーションを実施した。 次に模型実験で使用する粘性土が高温履歴を受けたときの力学特性を把握するために高温対応型三軸試験装置を用いて圧密・非排水せん断試験を行った。また,三軸試験に用いた粘土試料の水平断面と鉛直断面の電子顕微鏡写真において,直行する方向の写真の濃度分布を測定し,その波形のパワースペクトル解析を行うことによって粘性土の微視的構造を定量的に評価した。その結果,高温履歴を受けた粘土では高位な構造が形成され,せん断初期にはこの構造が抵抗するが,せん断が進むと構造が破壊され,高温履歴の影響がなくなることが明らかとなった。
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