研究概要 |
高温環境に曝される粘性土地盤の挙動を明らかにすることを目的として,粘土要素の挙動を明らかにする高温三軸試験と,実地盤の応力レベルでの挙動を明らかにする高温遠心模型試験を実施した.試験には,広島港より採取した沖積粘土を用いた.高温遠心模型試験では,パネルヒーターを地盤内に3枚挿入し,地盤全体を最大で70℃の高温にする試験とドレーンペーパーを巻いたパネルヒーター1枚を挿入し,地盤の一部を高温にする試験を行った. 高温三軸試験と微視的構造の定量的評価結果より,高温履歴を受けた粘土では高位な構造が形成され,せん断初期にはこの構造が抵抗するが,せん断が進むと構造が破壊され,高温履歴の影響がなくなることが明らかになった. 地盤全体を高温にする遠心模型試験では,地盤の含水比の低下,非排水強度の増加が見られ,70℃の試験の非排水強度は20℃の試験の約1.5倍になった.この結果は高温三軸試験の結果と整合した.高温履歴を受けた地盤の強度増加のメカニズムとしては,高温時に二次圧密が促進されることと,その後の温度低下によって骨格構造が固化するためであると考えられる. 地盤の一部を集中的に加熱して高温状態にする遠心模型試験では,短時間のうちにヒーター近傍の地盤から排水し,明瞭な地盤沈下を生じた.ヒーターに近いほど非排水強度は増加し,含水比は低下していた.この結果より,高温状態では透水係数が増加することによりドレーンによる圧密時間の短縮効果をさらに高めるとともに,前述した高温による圧密後の強度増加率の向上などの効果が同時に働くことが期待できることが明らかとなった.このことは,ドレーン効果と高温効果を併用することによって,地盤内の特定箇所の沈下を促進させて強度増加を図る新しい地盤改良工法の有効性を示すものである.
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