研究概要 |
トンネル切羽の安定度評価システムの基幹技術となる3次元写真測量技術の精度検証と現場適用性に関する検討を行った.写真測量とは,被写体を異なる位置から撮影し,複数枚の写真をコンピューターで立体視処理することにより,3次元の位置を自動的に計測する技術である.本研究で目指しているシステムは,ナノ精度の定点変位計測と写真測量を組み合わせることにより切羽の幾何学的形状や変形挙動を面的にしかも簡便に計測するものである. トンネル現場での適用性試験では,3次元の既知計測基準点が7点以上必要という制限を遵守するには,切羽での設置作業や計測が伴うため切羽作業との輻輳や,切羽作業の安全性に対して問題が多いことが明らかになった.そこで,切羽面に直接ではなく切羽面から若干離れた計測点を利用して切羽の形状を計測する方法を考案した.トンネル建設工事において,トンネルの天端,側壁に計測ピンを打設しその変形挙動を計測することはしばしば実施されるため,その点を3次元切羽写真測量の基準点として活用することとした.しかし,この方法では計測精度が低下することが予想されるので切羽内に,座標値を与えない「準点」を新たに設定することとし,その数,基準点位置のずれによる精度低下について室内試験で評価した.その上で,実際の切羽変形挙動を再現するために,厚さ9mmの発泡スチロール版を切羽を模擬した壁面に接着するまえと後とで切羽写真をそれぞれ計測し写真測量の精度を再検証した. それらの検討の結果, 1)準点数と準点の設置位置については,解析精度により大きな影響を与えるのは設置位置であり,切羽面を囲むよう準点を設置することが計測精度を向上させるために最も有効であることが明らかとなった. 2)1)のような準点を設定することで,デジタル写真測量から切羽面変形挙動をミリ精度で捉えることがほぼ可能とあることがわかった. 今後は,写真測量プログラムを改良し,複数回の計測結果の差を計測できるような改良により変形挙動の発生位置,量を面的に把握するように研究を進めていく予定である.
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