研究概要 |
本研究では,表層軟弱地盤の振動増幅特性について,振動の発生から伝播・増幅メカニズムについて解明するとともに,防振対策について検討を行った。今年度得られた研究成果を以下に述べる。 表層が河川氾濫源の軟弱地盤で構成されている箇所で,道路交通振動調査が行われている。この結果を吟味し,表層地盤の卓越振動数(4Hz付近)と沿線家屋の共振現象を解明した。また、別の調査事例では,鋼構造の橋脚より発生された地盤振動が約100mも遠距離伝播し,特殊構造にある家屋と共振して振動増幅される現象を確認した。一方、平面道路における道路交通振動調査では,路面凹凸状況に関し、積載振動計を用いた簡易手法で評価する方法の妥当性を検証した。 これらの振動伝播・増幅メカニズムをさらに詳細に検討するため,既存の地盤調査資料から軟弱地盤(沖積粘性土,N値2-4,S波速度100m)が5m程度以上分布する箇所を選定し,地盤調査を実施した。調査内容は,標準観入試験併用のボーリング調査,速度検層である。今後,当科学研究経費で購入した孔内地震計に既存の振動計を加え、詳細な現地調査を予定している。 また,防振対策に関しては,(1)中空部を有するPC壁体を用いた中規模現場実験,(2)EPS(発泡スチロール)模擬地盤を用いた室内試験および(1)の研究成果の数値シュミレーションを行った。 中規模現場実験では、重鍾を自由落下させる衝撃加振法を用いた。加振位置を壁体付近とする方法(能動的遮断法と言う)および壁体から離れた位置とする方法(受動的遮断法と言う)について検討した。壁体施工中の空溝でも同様の実験を行い比較検討した結果,PC壁体により空溝と同程度の振動遮断効果(約10dB)が認められた。この結果を検証するために,防振対策を施していない自然地盤状態での観測記録を用いて三次元シュミレーション解析を実施した。実測結果と解析結果は非常に良く対応しており,解析手法および解析モデルの妥当性を確認した。 別の室内試験では,地盤の振動伝播特性を調べるとともに,防振対策として鋼管列による振動低減効果について検討した。EPSは工業製品であるため均質であり,実験の再現性がよく,安定した試験データが収集できた。この結果を基にEPS模擬地盤の振動の伝播・減衰挙動ならびに鋼管列の振動低減効果について明らかにした。
|