本研究の目的は土壌の凍結融解による浄化修復技術の適用範囲を明らかにすることであり、今回の研究期間では、冷却条件、土壌の種類等によるイオン状物質の移動量、移動方向について実験的検討することとしている。本年度は、普通程度の凍上性を示す土壌を対象とした。試料に溶質としてNaClを混合した供試体を作成して、1次元凍結融解実験装置にて、給水の有無、冷却速度、温度勾配、荷重について検討を行った。その主な結果は次の通りである。 今回の実験条件では、凍結時の給水の有無に関係なく、溶質成分が高温側に移動する所謂「吐出し」現象は観察されず、全ての条件において溶質は高温側より低温側に移動した。このことより、凍上性の土壌を凍結した時の水分と溶質の移動方向は、局所的なばらつきは否定できないが、共に全体的には高温側から低温側と理解して良いと思われる。また、水分供給を行わずに凍結した場合には土壌間隙の溶質濃度には変化がないことからも、水分と溶質とは同時に移動していて、溶質のみの低温側から高温側への吐出し現象は工学的には無視できるものと思われる。 次に、給水の有無についての検討では、凍結時に高温側より給水を行うと、凍上による吸引力による供試体への流入水により高温側に洗浄域が広がることが確認できた。また、供試体の中心部では濃度分布に変化が見られなかった。さらに、低温側の領域では、初期値あるいはその前後の濃度分布を示した。このことは、高温側からの補給水により供試体内の溶質が低温側にそのまま押出されたことを意味する。このようにして細粒分を含む汚染土壌に凍結融解を作用させた場合には、洗浄域が高温側から低温側へと拡大を続けるものと考えられる。今回の一連の実験結果では、このような洗浄効果は、冷却速度が遅く、温度勾配が大きく、荷重が小さい等の凍上量が大きくなる条件で顕著のようである。
|