研究概要 |
1.石垣模型肩部の静的載荷実験(発表論文11.1) 本研究は石垣の安定メカニズムを検討する一手法として,石垣模型の肩部に静荷重を加えたときの石垣面の孕み出し状況(=安定性)などを測定し考察したものである.今回の実験では(1)石垣肩部の載荷位置の差による孕み出しへの影響(2)石垣高さ・勾配・積み石密度および石積み技法の4要素の水準値を変えたときの孕み出しへの影響(3)積み石9ヶに1ヶ程度控え長が大きい積み石を用いたときや反りを加えたときの石垣安定性を増加させる効果の検討を行った.これらの実験検討結果は次のとおりである.(1)石垣肩部の載荷重は積み石控え長内に収めることが望ましい.(2)上述要因中では石垣安定に対する寄与率は勾配が70%で勾配が支配的である.(3)積み石9ヶに1ヶでも控え長の大きい積み石を用いること,反りを加えることは石垣安定に有利に作用する. 2.FEM-3D(L_<27>)による石垣の動的挙動の数値解析実験(発表論文11.2) 筆者らが提案してきた「石垣積み石間に仮想間詰め材を挿入することにより,石垣を連続体として扱う手法」を用いて,石垣の振動性状および石垣安定に対する影響傾向を把握しようと試みた数値解析実験結果を考察した. 得られた結果は次のとおりである. (1)GL-50mでα=300galの加速度入力を行ったところ,石垣最下段で水平変位δ=±100mm,α=100galであったが,石垣高さが高くなる程増幅し,H=21.0mではδ=±200mm,α=150galとなった.(2)石垣構成要素の物性値(=材料種類・締固め程度など)が石垣断面の固有周期に与える影響は6要因とも寄与率p=10〜20%程度で,その周波数は1次で3〜7Hzとなった.(3)石垣断面が地震時に孕み出し(=安定性)を生じる要因はH,θの形状寸法が主で,物性値はさほど大きな影響力はない.
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