日本の城郭石垣は独立した石塊を石灰などの接着材を用いないで、反りや隅角部算木積みなどの独特な技術を用いて積み上げていて、世界的にも例を見ない貴重な文化遺産である。しかし老朽化が進み、崩落の危険性が高いものも多い。 本研究では次のような模型・数値実験を行った。主な研究成果は次のように整理できる。 1.石垣模型を用いた振動実験 幾何相似率1/10の石垣を振動台の上に作成し、石垣面の孕み出し量・石垣面の加速度・動変位などを測定し、地震時の安定性は石垣勾配に大きく影響されること、石垣下から上に向かい振幅・加速度が増幅されることなどが定量的に示された。 2.石垣模型天端での静的載荷実験 幾何相似率1/10の石垣を土槽内に作成し、天端で載荷した時の石垣面の孕み出し量から、上載荷重は積み石控え長さの範囲内でないと十分な安定性が得られないことが示された。 3.FEMを用いた数値解析実験 石垣断面が連続体として扱えるように、積み石間に仮想間詰め材およびその物性値を想定し、GL-50mから規則波を加速度入力した時の石垣の動的挙動を解析した。地盤下から入力された地震波は、地盤中で変位は大きく増幅され、加速度は減衰するが、石垣中では変位・加速度ともに増幅され、最上部の積み石は不安定になること、石垣の安定性は高さや勾配などの形状寸法により大きく影響され、間詰め・裏込め・地盤の弾性係数などの物性値はあまり影響しないことが示された。
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