砂浜に開口部をもつ河口や潟湖の入口には、波によって運ばれた沿岸漂砂が堆積して砂州が発達し、開口部が狭くなる。一方で開口部を通る河川流や潮汐流は、開口部に堆積した土砂を侵食し除去する作用がある。これらの開口部には、堆積と侵食が拮抗する平衡状態が存在すると考えることができ、世界各地のデータを集め、潮汐、河川流、波浪が存在する条件下での地形平衡条件を求めることを研究の目的とする。 初年度はデータの収集を中心に行った。阿武隈川河口では、東北大学が20年以上にわたって、河口砂州の測量を続けてきており、砂州形状、粒径、河川流量、潮汐水位、波浪などの観測データを収集した。また、インドネシアでは、ジャワ島の南海岸における河口のデータを収集した。この海岸はインド洋に面していて、高波浪が来襲すること、沖にプレート境界があってジャワ島は隆起を続けており、南側斜面の勾配が急で、砂浜海岸となっていること、またインドネシアには明確な乾期と雨期があって、乾期には河川流量が減少することが重なって、この海岸に開口部を持つ河口が数多く河口閉塞を引き起こすため、工学的に興味深い現場である。 さらに、アメリカ合衆国の西海岸の太平洋側、東海岸の大西洋側、南海岸のメキシコ湾岸に数多く発達する潟湖入口の地形、粒径、波浪、潮汐データを収集した。 データ収集と並行して解析を行い、河口部の土砂収支に関する微分方程式を導出した。この方程式を無次元化して、現象が2つの外力に関する無次元量によって決定されることを明らかにした。
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