研究概要 |
1.湿性沈着量の長距離輸送解析;850hPaで流跡線に沿った空気塊を4日前まで追跡しながら移流過程における硫黄酸化物の変質,乾性沈着を考慮,降雨域では湿性沈着も併せて計算する.その汚染物質が栃木県内に流入,除去さらに生成・消滅を考慮して拡散式と物質モデルにより湿性沈着量を求める.(1)拡散式では混合層の高さは,気象条件,地表面状態によって変化するが,それらを考慮せず1000mで一定とした.(2)物質輸送モデルでは,大気中の硫黄酸化物,硫酸エアロゾル及び雲水中の硫酸イオンについて考慮した.モデルでは,硫黄酸化物からエアロゾルへの気相酸化反応のみを考慮した.(3)計算領域と気象データでは,東経110度から150度,北緯20度から60度で,1°×1°の格子で計算を行い,気象データは,気象庁による高層気象観測データの風速データの風速場によって輸送されるとした. 2.酸性土壌が樹木(苗)の生長反応に与える実験的検討;樹木への酸性降下物の影響として,土壌酸性化による生長阻害が指摘されている.そこで,人為的に酸性化した黒ボク土でスギ,コナラ,シラカシの1年生苗を長期間<336,687>育成し,酸性土壌が樹木の生長反応に与える影響を検討した. 2.1実験結果;土壌への酸性物質の負荷は土壌の酸中和能を低下させ,長期的な酸中和能の維持は見込めず,将来土壌pHの低下を引き起こす可能性があると考えられた.樹木は土壌酸性化に対し酸性化を阻止する働きがある.スギは地上部、地下部ともにコナラ,シラカシより酸性雨に対し感受性が高いと考えられた.H+以外に生長低下の要因として一つはAlの溶出による植物必須元素の吸収阻害である.本実験においては,(K+Mg+Ca)/Alモル比100前後で生長評価する必要があると考えた.もう一つの生長低下の原因は,自然状態における土壌中の植物必須元素不足である.これは降雨により溶脱されるためである.
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