研究概要 |
海洋観測レーダは波浪方向スペクトルや海浜流の平面分布をほぼ瞬時に計測できる新しいタイプのである.さらにこのレーダは陸上に設置するため従来の海底設置型観測機器に比べて設置・維持管理も容易であるなどの長所も備えている.しかしレーダによる現地観測の実績は少ないのが現状である.そこで本研究では海洋観測レーダの実用化に向けて試みとして,Xバンドレーダによる冬期日本海の長期海洋観測を実施し,このレーダの現地観測での適用性を検証するとともに,対象領域での波浪や海浜流場の空間分布特性の解明を試みた. 観測は2002年11月から2002年3月までの期間,新潟県大潟海岸の京都大学防災研究所大潟波浪観測所の桟橋の先端にXバンドレーダを設置して行った.対象領域はレーダを中心とした半径5〜kmの領域とし,毎正時に自動計測した.そしてレーダによって得られたシークラッター画像を3次元フーリエ変換し,微小振幅波理論の分散関係式を適用することにより,1時間ごとの計測対象領域内の表層流流速分布と波浪方向スペクトルを推定した. 今回解析で得られた海洋表層流の特徴は,面的にほぼ一様で,流向が海上風とほぼ等しく,かつ海上風の風向変化にも追従していることである.このような表層流速分布は従来の観測機器では計測が困難であり,今回のレーダ観測により,このような表層流の特徴を明らかにすることができた.また,海上風低風速時や低波浪時ではレーダ画像上のシークラッターが明瞭に得られず,正確な解析が行えない,という本レーダーシステムの性質も明らかになった.このように今回の観測を通して海洋レーダの実用化に向けたレーダシステムの詳細な特性を把握することができた.
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