研究概要 |
本研究は劣化が進行していくインフラストラクチャを将来にわたって適切に維持・更新していくための方策を動的計画法の考え方に従って立案するための方法論を開発している. インフラストラクチャは長期にわたって杜会全体に便益を及ぼすという意味で社会的な資産であり,インフラ資産と呼ぶことができる.様々な環境条件のもとで供用されるのに伴って,インフラストラクチャは劣化してその状態が変化していく.維持・更新の施策は,将来の劣化に応じてそれらを適切に実行していくことにより,インフラ資産の価値を保全・増進していくことを目的としている. インフラストラクチャが将来劣化していく過程は,確定的に捉えることができず,インフラストラクチャの種類や環境条件に応じた特徴的な確率過程としてモデル化される.従って,将来のインフラストラクチャの状態が確率変数であることから,インフラストラクチャの維持・更新も,インフラ資産の経済価値を期待値として捉え,それを最大にするように決定されなければならない.将来の不確実性を明示的に考慮した最大化問題は,確率的動的計画法の手法によって解くことが出来る.そのため,本研究では確率的動的計画法のアプローチに依拠してインフラ資産の管理方法を検討することとしている. 本研究では,まず,一般的なフレームとして,劣化過程を確率微分方程式で表し,目的関数をインフラストラクチャが将来にわたってもたらす純便益の流列を割引現在価値に換算したストック価値で表した問題を定式化している.その数学的性質と経済的意味解釈をしめしている.次に,繰り返し荷重による疲労劣化の状況に置かれた道路橋を例として,劣化過程を離散化してマルコフ連鎖で表現した特定化されたモデルを提案している.そのモデルを用いて,実際の道路橋を例としたケーススタディを行ない,将来の劣化状態と実行すべき修繕をルールとして結びつけたインフラ管理戦略の具体例を示している. 以上により,確率動的計画法の考え方に依拠したインフラ資産管理の手法を開発し,ケーススタディを通してその有効性を示した.
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